コンタクトレンズの安全性について(2007年1月10日)

コンタクトをめぐるさまざまな問題があり、被害を被っているコンタクト装用者が多くいます。インターネットなど商取引のグロ−バル化により、日本の問題だけでは片付かない時代になっています。そこで、今多く使われている使い捨てコンタクトレンズに関して、整理して考えて見ました。

1)コンタクトレンズ自体の信頼性

現在販売されている使い捨てコンタクトレンズ(殆どはソフトコンタクトレンズ)、メーカーが、主に南米(一部東南アジア)で生産させたものを販売しております。毎日使い捨てレンズなど28枚(1ヶ月分)3,000円前後という安い価格のレンズは、日本の高い人件費では作れないので、日本のコンタクトメーカーも輸入に頼っています。したがって、生産国が日本でないから心配と言うのであれば、使い捨てを購入することはできません。高度医療機器に分類されるこれらのコンタクトレンズ厚生労働省の認可を受けておりレンズ自体には問題ないと考えてよいと思います。しかし、駅前のコンビニで化粧品と一緒に売っているカラーコンタクトは視力矯正用の医療機器ではありませんので、材質も悪く眼障害を起こすので問題になっています。しかし、厚生労働省の管轄外で取り締まることもできず、まだ、問題の解決には至っていません。

2)コンタクト販売者の問題

使い捨てコンタクトの手軽さと安さが受けて、従来の1年間使用するソフトコンタクトレンズは殆ど売れなくなってしまいました。そこで業者が従来のソフトコンタクトを販売する手段として考えたのは価格をできるだけ抑えた、頻回交換レンズです。使い捨てとは1日とか、1週間とか、例外を除いて最長2週間で捨てますが、頻回交換レンズは1ヶ月で捨てるというものです。しかし、ものは従来のソフトコンタクトレンズですので、やはり毎日消毒し、擦り洗いをして、1週間に一度はハイドロケアと言う作業をしなければならないばかりかケア用品代まで入れると決して安いとはいえないのです。それで量販店は自社製品を作りコストを削減したところまでは良いのですが、これを「使い捨てレンズ」と称して、手間とコストのかかるコンタクトケアと用品を積極的に説明しない。コンタクトレンズ装用してはいけない人にまで販売してしまう。コンタクト処方に必要な医師は、専門外の産婦人科、脳外科、泌尿器科などの医師を雇って処方させる(これは違法ではない)。その診療報酬はまず量販店に入り、そこから医師の給与が支払われているようです。つまり、コンタクトレンズが原価割れで販売しても、診療報酬が入るので採算は取れるというわけです。国民の健康のために徴収された健康保険料がコンタクトレンズの安売店の経営を維持するために支払われるとしたら由々しきことです。そこで、2006年4月から、診療報酬改定がありコンタクト診療のみしている診療所に対しては大幅な診療報酬の減額がありました。これで、量販店のいくつかは閉店に追い込まれたようですが、先日悪徳大手量販店のことが新聞紙上を賑わしておりました。その手口は、コンタクト診療しかしていない患者を一般診療に偽装する、定期的に雇っている医師を転勤させ、医師交代時に新たな診療所として開設届けを出し、受診者全員から初診料を取るなどです。もうじきブラックリストに載った診療所の一斉摘発が行われると思います。でもまた、例のごとく罰せられるのは医師だけで、多分黒幕の経営者は罪に問われないと思っています。

3)コンタクト処方する医師の問題

基本的にコンタクト専門クリニックの医師と私たち一般診療所の医師との違いはないと思っています。しかし最近は開業するときに融資条件が年々厳しくなっていると聞きます。本当にお金に困っていて、開業資金など無理なときは、あまりにも無知でしたのでひょっとして私もコンタクト診療所の雇われ医師になっていたかも、と思うとぞっとします。諸先輩や医師会の先生方の助言があってこそ現在の自分があると思っております。

では何処が違うかと申しますと、一般診療所では、患者さんの病気を見ます。病気を治療するのが目的ですので、治って帰ってもらえればいいのですが、患者さんが悪くなると診療所としては死活問題なので、なんとしてでも良くなってほしい、病気を見落とさない、患者さんにとって危険なことは回避しようとします。ですから問題が起こりそうな患者さんには「コンタクトしない方が良い」とすぐいってしまいますが、コンタクトを売るために雇われている医師にはそれが言えません。おまけに産婦人科などの専門外の医師が診察する場合には自信を持って「コンタクトを中止しなさい」と言えない問題があります。

4)コンタクト装用者の問題

 コンタクトレンズ装用の禁忌には、1.結膜炎、2.眼瞼縁炎、麦粒腫、3.涙液減少、4.角膜表層疾患、5.神経過敏症などが一般的に教科書で言われていることです。コンタクトレンズのトラブルでは、量販店で苦情をいうとコンタクトレンズは大丈夫としかいいません。しかし、A.コンタクトレンズ自体の問題(破損など)、B.コンタクトと装用者の相性の問題(フィッティングなど)、のほかにC.装用者自体の問題があります。たとえば3のドライアイがありますとレンズが汚れやすくなり、曇って見にくくて、装用感が悪くなります、そこで、毎日まめにレンズを擦り洗いしない人の場合さらにレンズが汚れてアレルギー性結膜炎を起こしたり、角膜に傷をつけて角膜浸潤や角膜潰瘍という角膜感染症をおこしたりして失明にいたる場合があります。レンズの水中ケースの掃除をせず、保存液をケチって、水道水を使うと水道水にいるアカントアメーバの感染がおこり、これはとても治療が困難で失明します。それに、目に傷がいったあと、それが治ったかどうかはどうして判断するのでしょうか、治らないうちに自己判断でまたコンタクトを装用して、ひどいことになっている人もいます。

5)コンタクトレンズに関する国別の考え方の相違

 使い捨てコンタクトの考え方は米国から入ってきました。あらゆる民族のるつぼで2050年には白人よりも黒人やヒスパニックがなど有色人種で50%を超えるといわれています。合理的な契約社会で、コンタクトレンズはドラッグストアで販売されていますし、オプトメトリストと言って日本のメガネ屋さんに掲げている看板(眼鏡士)とはまったく違う4年制の大学で医学生理学などを学んだ人が視力を管理しているようです。いずれにしても、日本と管理システムが異なり本物のピストルの組立キットがコンビニに売られているような国柄ですので、承諾書にサインしてコンタクトを購入したらあとは失明しても自己責任ということなのです。

6)定期健診の勧め

 先ほど述べましたように、20064月から、それまでは何らかの病名をつけて診察していたコンタクトレンズの定期健診が保険で認められるようになり、コンタクトレンズの量販店が潰れる位、大幅に診察料が安くなりました。この診療報酬改定で量販店のコンタクトの価格は上昇傾向にあります。通販で購入してもレンズは(多分)同じですがA.コンタクトレンズ自体の問題、B.コンタクトと装用者の相性の問題、C.装用者自体の問題のうちのAだけですむ問題ではありません、購入者にとっては安いコンタクトはありがたいのですが、安いコンタクトで盲目になるリスクを負うよりは、コンタクトをしない(一番安い方法で私が実践しております)とか、するなら信頼できる眼科の先生のところへ3ヶ月に一回ぐらいいくのが良いと思います。初診は少し高くつきますが、再診の患者さんでは再診料710円コンタクト検査料1120円で合計1830円ですが3割負担で549円です。眼の安全を買う値段としては安いと思いませんか。