山本眼科 山本起義
(2016年9月岸和田市医師会広報掲載)
T.鍵盤楽器の歴史からみる鍵盤配列
U.音律の歴史からみる鍵盤配列
グイード・ダレッツオの功績
音階に影響した「シ」の問題
音階と鍵盤配列
平均律が一般に広がるのに時間がかかったのは何故か
古典調律
ねじの技術革新と平均律
バッハの平均律クラヴィーア曲集は平均律で演奏されたのか
バッハは「良く調整されたクラビーアのための曲集」と何故書いたのか
平均律時代の到来
鍵盤配列のまとめ
1)最初の鍵盤楽器はオルガンで、紀元前3世紀頃の「水オルガン」から始まるりますが、現在の鍵盤形式になるまでには紆余曲折がありました。
2)4世紀から10世紀の教会オルガンの鍵盤は全音階的で単音聖歌の旋律を奏しました。
3)9世紀には和声や対位法を持つ複音楽が出始め、正確に音を書きとどめるための「ネウマ譜」が登場しました。
4)複音楽(ポリフォニー)の演奏には正確な記譜法が必要で、11世紀の音楽理論家グィード・ダレッツオ(Guido d'Arezzo 991年または992年− 1050年)は、現在用いられる楽譜記譜法の原型を考案しました。
5)楽譜を歌うために、音名ではなく調性に関係なく歌える階名で歌えるように、グィード・ダレッツオ(Guido d'Arezzo)が「聖ヨハネの賛歌」の歌詞から「ドレミ唱法」を考えだしました。
6)しかし、当時の階名には最後の「シ」がありませんでした。このドレミ唱法に「シ」が入ったのは1600年頃、「ウト」は発音しにくいため「主」を示すDominusのDoに変更され「ド」と呼び変えたのは1670年ごろと言われています。
それで、「シ」が階名の最後にできたのは「ドレミ唱法」からおよそ300年間経過してからになります。その間「シ」の地位は不安定だったので、ドイツ音名も「B」と「H」の二種類が用いられていました。
7)14世紀になった1361年頃には現在のような半音階を全て備え鍵盤をもつオルガンが出来ました。ただ、平均律はまだ考案されておらず、古典調律で調律されたオルガンでした。
8)1361年頃から、倍音が発見される1636年までは、純正音律や中全音律という古典調律で調律されていましたが、1636年ごろには平均律が考案されました。
9)しかし、平均律が考案された1636年から1840年までの間は、技術的な困難さから平均律はあまり用いられず中全音律(ミーントーン)の次はベルクマイスター音律やキルンベルガー音律という古典調律が考案されました。
10)1800年にヘンリー・モーズリー(Henry Maudslay 1771-1831)の技術革新により正確なネジが工業生産できるようになり、
このネジを用いて1840年代に当時のピアノメーカーのトップ、ロンドンのジョン・ブロードウッド社が製造するピアノに平均律を採用したことが決定打となり、平均律の調律は一気に広まりました。